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焼酎

2026年3月30日 · 文:Kiyo Darner · 約3分

そば雲海:そば焼酎というジャンルを作った蔵

焼酎の分類の多くは、誰が始めたのか分からないほど古いものです。そば焼酎は違います。年と住所があります。

1973年、宮崎県五ヶ瀬

雲海酒造が世界で初めてそばを原料とした焼酎を造り、「雲海」の名で世に出したのが1973年です。このジャンルにあるものは、すべてそのあとに来ました。日本の酒について、こう言い切れるのは珍しいことです。

1973年までかかった理由は、そばが手強いからです。麹はカビですから、仕事をするには穀物の内側に入り込んでデンプンを分解しなければなりません。ところがそばの実は表面が硬く閉じていて、麹菌がなかなか入っていけない。だから焼酎の歴史の大半において、そばは現実的な原料ではありませんでした。そもそもそば麹をどう造るか、そこが発明でした。酒はその結果です。

中身のこと

ここは誤って伝えられがちなところで、うちの以前の紹介文もそうでした。そば、とだけ書いて終わっていたのです。

そば雲海は100%そばではありません。そば、大麦、米で組み立てられていて、麹も大麦麹・米麹・そば麹の三種類を使い分けています。そばが前に立ち、大麦と米が下から支えて厚みとやわらかい着地を与えている。

これは妥協ではなく設計です。そば一本でどうなるかを味わいたいなら、うちには十割の「トワリ」もあります。並べて飲むと、どちらか一方だけを飲むよりも、この違いがよく分かります。

酵母のこと

雲海はもうひとつ、自社農園のそばの花から自分たちで分離した酵母で発酵させています。そば花香り酵母と呼ばれるもので、あの果実のような香りはここから来ています。

これは知っておく価値があります。そば焼酎を飲んで、甘く華やかだと感じ、そばのおかげだと思う方が多いのですが、そばは甘くも華やかでもない原料です。やっているのは酵母です。麹の色と同じ話で、焼酎のラベルにおいて原料表記は、たいていいちばん情報量の少ない部分なのです。

味わい

軽く、やわらかく、ほのかに香ばしく、後味は澄んで辛口。喉に引っかかるものがありません。注意を引こうとする要素が、何も入っていない。

そこが良さであり、同時に過小評価されやすい理由でもあります。長い食事のあいだ、ずっと横にいて、一度も意識に上らないために造られた酒です。

飲み方

ロック、ソーダ割り、水割り。どれも合いますし、どれが間違いということもありません。

焼き鳥、揚げ出し豆腐、にんにく枝豆、クリスピーライス。料理と張り合わず、下から支えてくれる。うちが置き続けている理由の大半はそこです。

焼酎を飲んだことがなく、ウイスキーは重いと感じる方は、ここから始めてください。