2026年3月8日 · 文:Kiyo Darner · 約3分
南海 黒糖焼酎:奄美でしか造れない理由
焼酎にはいろいろな種類があります。芋、麦、米、そば。そのなかで黒糖焼酎だけには、法律上の決まりがついています。そして、その決まりの成り立ちがいちばん面白いところです。
なぜ一か所でしか造れないのか
黒糖焼酎の原料は黒糖です。日本の酒税法の素直な理屈でいけば、これはラムと同じスピリッツであって、焼酎ではないはずでした。
奄美群島だけが例外です。しかもその例外には、はっきりした事情と日付があります。
奄美は戦後アメリカの施政下に置かれ、1953年12月25日に日本へ復帰しました。同時に日本の酒税法も適用されます。ところが当時の酒税法は、焼酎の原料に糖分を含む物質を挙げていませんでした。つまり黒糖の蒸留酒はラムと同じスピリッツに分類され、税額はおよそ3割高くなる見込みだった。島の産業そのものだった造り手にとっては、致命的な話です。
島は陳情しました。酒税法の適用は猶予され、1954年には施行規則が改正されて黒糖を原料とする焼酎の製造が認められます。そして1959年、国税庁の通達によって現在まで続く条件が定まりました。造れるのは奄美群島に限ること、そして米麹を使うこと。
だから世界中の黒糖焼酎は、九州と沖縄のあいだにある小さな島々からしか出てきません。売り文句としての産地ではなく、見直されないまま残った税の判断です。
ラムとどう違うのか
ラムは糖をそのまま発酵させます。黒糖焼酎は、黒糖を米麹と一緒に発酵させます。麹は日本酒や味噌と同じあの麹で、これが結果を大きく変えます。
麹は穏やかに分解し、それ自体の香りも加えます。そのため芋焼酎より軽くて澄んだ酒質になり、ラムのような重い糖蜜感ではなく、バニラ、さとうきび、南国の果実のような風味になります。仕込みには糖があるのに、グラスにはほとんど甘さが残りません。
ご用意している3本
南海を造っているのは、奄美大島の奄美大島開運酒造です。うちでは3種類を置いています。
- 南海:標準のボトル。澄んで明るく、ほのかに甘く、後味はなめらか。
- 南海 ホワイトオーク:ホワイトオークで短期間寝かせたもの。バニラ、スパイス、焼いた木の風味が加わります。
- 南海 ゴールド:いちばん厚みのある一本。黒糖80%、米20%で仕込んだ原酒を、アメリカンホワイトオークとフレンチ・リムーザンの樽で最長5年熟成させ、一部を減圧蒸留してブレンド。レーズン、チョコレート、はちみつ。アルコール43%。
森を戻す話
南海の売り上げの一部は、奄美群島の植林に充てられています。
これを一文書いておくのは、単なる社会貢献の話ではないからです。亜熱帯の森があるからこそ島の水がああいう水になり、その水が焼酎の中に入っています。蒸留所が自分の水源を養うのは、寄付というより手入れに近い。
飲み方
香りを楽しむならストレート。よく飲まれているのはロックで、少し加水されることで果実の風味が立ちます。ソーダで割って柑橘を搾ったハイボールは、食事と一緒にいちばん飲みやすい形です。
とくに焼きものと合います。焼き鳥、豚バラ、炭で焼いた魚介。
焼酎を飲んだことがない方にも向いています。芋焼酎よりやわらかく、慣れが要りません。
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