2025年4月13日 · 文:Kiyo Darner · 約3分
クリスピーライス:ごはんを一度冷ます理由
クリスピーライスはニューヨークの日本料理店ならたいてい置いてありますが、その半分くらいはべちゃっとしています。差がつくのは揚げ方ではありません。油に入るまでの数時間、そのごはんが何をしていたかです。
みんなが取り違えるところ
炊きたてのごはんは、糊化したでんぷんの中に水をたっぷり抱えています。それを油に入れると、表面が色づく前にまず水が抜けなければならない。つまり揚がるのではなく蒸れることになり、白っぽくて脂っこい塊ができ、皿の上でへたります。
一度冷ましたごはんは、別のことをしています。炊くあいだに膨らんで広がったでんぷんの分子が、並び直しながら水を押し出していく。これを老化と呼びます。冷蔵庫のごはんが硬く、少し乾いた感じになるのと同じ現象で、チャーハンのレシピが必ず前日のごはんを使えと書く理由でもあります。
クリスピーライスでは、これが二つの仕事をします。形が崩れずにまとまること。そして表面が乾いていて、すぐに焼き色がつくこと。硬くて泡立った衣のような外側と、やわらかくもちもちした内側。この料理の狙いはそこに尽きます。
酢飯を使うとさらに良くなります。すでに酢と砂糖と塩で調味されているからです。砂糖は色づきを早め、酢は濃厚な具をのせても味が平板にならないよう支えてくれます。
うちのもの
揚げた酢飯、一皿五個。上にスパイシーツナか、はまちのどちらかをのせ、柚子わさびのソースをかけています。
以前は二品に分けていたものを、ひとつにまとめました。上の魚が違うだけの同じ料理で、分けておく意味がメニューを長くすること以外になかったからです。
濃厚なほうが良ければスパイシーツナ。衣に対してやわらかくクリーミーで、辛さは当たるというより後から積み上がってきます。
輪郭のはっきりしたほうが良ければはまち。脂が少なく身が締まっているぶん、柚子わさびが働く余地があります。わさびの辛さは揮発性で、舌の上に居座らず鼻に抜けるので、すっと消えたあとに柑橘が残ります。
対比そのものが料理です
熱いと冷たい、硬いとやわらかい、濃厚と鋭い。どの要素も別の要素に対して置かれていて、だから最初の一皿として重くなりません。
冷たくて炭酸のあるものと一緒にどうぞ。ビールやハイボールは一個ごとに口をリセットしてくれます。切るのではなく合わせたい方には、少し厚みのある日本酒や焼酎も良い。
なお、メニューでは(*)がついています。生の魚を使っているという印です。
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